ペットと楽しく暮らす家づくり ~犬猫への住まいの配慮(ペットフレンドリーとペットプルーフ)~
この中から、このコラムでは特に気を付けたい「収納」と「空気環境」「逸走防止」についてお話致します。この図は、私の著書「犬・猫の気持ちで住まいの工夫」のものです。部位別に詳しく知りたいと言う方は、書店や図書館で手にしていただければと思います。
収納について
モノの置き方で、犬猫が「くわえたくなる」「さわりたくなる」などの、失敗を誘発するような環境状況があります。そこで、しっかり「しまう」ために、機能的な「収納」を心がけましょう。犬猫にとって届くものは全ておもちゃです。自由に歩ける場所、届く位置にはいじられたりしては困るものは置かないようにします。ですから、すぐにしまえるような収納を増やす必要があるのです。犬猫用の生活用品は、使う場所に収納を確保すると使い勝手がよくなります。(図14)
収納を増やす時の注意点ですが、無計画に棚を置かないこと。収納を増やそうとして置き家具を多くしてしまっては、室内に凹凸が多い状態で掃除に手間取って逆効果です。家具の裏もハウスダストや湿気がたまりやすいもの。臭いを吸着するホコリや湿気は、悪臭の原因になります。
空気環境
日本の高温多湿な気候が、室内の衛生面と犬猫の健康面に影響をおよぼします。ヒトと住空間をシェアしているときの課題は室温調整ですね。猫は快適な温度を探して室内の高低を利用することができますが、犬の場合は平面のみで考える必要があります。犬の場合は人よりも快適温度は低いです。そのため、犬の居場所付近は温度が高くならないように、床暖房の配置から外すなど、温度設計も配慮すると良いでしょう。
また、犬の疾患では皮膚疾患が消化器疾患と並んで例年多く見られて、湿度による影響も大きいと考えられています。湿度を上手に調節する事は、空気によるストレス軽減のポイントでもあります。乾燥しすぎると皮膚に悪影響を与え、抜け毛やフケが増えます。逆に湿度が高いと、毛の中が蒸れるだけでなく、湿気が埃を床や壁に貼り付けてしまう事になります。ですから、湿度の調整が出来ると健康上だけでなく掃除の面でも効果的です。空気が室内に満遍なく移動していくよう、空気の流れ道を確保するのが、湿気を停滞させないコツです。窓や吸気孔から入った空気は、どうやって排気されていくのか、家の中の空気の流れを見直してみましょう。
逸走防止
玄関など人が頻繁に外へ出入りする場所には、逸走防止扉などが必要とされます。(図15)完全室内飼育の猫でも、家の中が安全で退屈しない環境であれば脱走要求は高くなりにくいですが、犬と同様で、人を追いかけて出口から飛び出すという、事故の脱走があるため、玄関にはゲートなどで前室空間を確保するなどしておきましょう。ゲートは、猫ではよじ登る事も可能なので、天井までのゲートとするのが安全です。(図16)
窓では、網戸を設けていても、よじ登って破れることもあります。網戸の手前に触ってもたおれないような柵があると安全です。(図17)
(図15.図16: 設計/かねまき・こくぼ空間工房)
(図14.図17: 設計/入江剛史建築設計事務所 施工/株式会社NENGO 猫空間監修/金巻とも子)
家庭動物住環境研究家・博士(工学)・一級建築士
動物と暮らす住研究所 所長
一級建築士事務所 かねまき・こくぼ空間工房
[https://pal-design.jp/]
金巻とも子