高齢ペットの栄養管理
【 高齢ペットの身体の変化 】
私たち人間同様、ペット達の身体も歳を重ねるごとに変化しています。
加齢に伴う身体や心の変化、内臓機能の衰えは少しずつ現れてきます。
変化の大きさは個々によって様々ですが、人間よりもずっと早いスピードです。
ペットの変化は毎日一緒にいるからこそ、つい見落としがちになることもあります。
加齢による身体の変化の例
- 内臓機能の低下
- 消化・吸収機能の低下
- 筋肉量・運動能力の低下
- 代謝量減少により、太りやすくなる
- 免疫力が低下し、病気にかかりやすくなる
- 関節・軟骨の摩耗が進む
- 被毛の艶が悪くなり、白髪が増えてくる
- 嗜好の変化
■老化のサインは3段階
年齢 | 特徴 | |
---|---|---|
中年期 | 小・中型犬:7~11歳位 大型犬:6~7歳位 猫:7~10歳位 |
人間でいう40~50代。見た目の変化は少ないが、老化が少しずつ始まる時期。 見た目の変化が少ない分、ちょっとした変化やサインを見逃しやすいので要注意。飼い主さんの日々のチェックで「健康貯金」をコツコツしていきましょう。 |
高齢期 | 小・中型犬:12~16歳位 大型犬:8~11歳位 猫:11~14歳位 |
人間でいう60~70代。 身体だけでなく、見た目からも老化が現れる時期。 筋力が落ちないよう適度な運動やマッサージ、段差等によるケガ予防や安全に過ごせるような生活環境の見直しも積極的に行いましょう。 |
老齢期 | 小・中型犬:17歳位以上 大型犬:12歳位以上 猫:15歳位以上 |
人間でいう80代からそれ以上。 体力の衰えが顕著になり、認知症の症状や歩行困難や寝たきりによる介助・介護が必要になる場合もあります。 少しでも変化が見られた場合は、自己判断せずに動物病院で適切な医療ケアを受けましょう。 |
【 栄養面で飼い主さんが気を付けてあげたいこと 】
高齢ペットの健康な身体づくりは、栄養バランスが取れた食事も欠かせません。
見た目は今までと変わらず元気でも、内臓機能や基礎代謝がだんだんと低下していきます。
また、運動量や筋肉が減ってくるため、今までと同じ食事を摂り続けていると肥満傾向になりやすく、反対に噛む力の低下や歯周病等、お口の中のトラブルから食べにくくなり、十分な栄養が摂れず体重が減少してしまう場合もあります。
■高齢ペットに適した食事・栄養
- 必須栄養素をバランスよく摂り入れる
- 消化・吸収のよい食事・高齢用ペットフード(総合栄養食)
- 良質なたんぱく質・低脂肪・低カロリー
- 抗酸化作用・免疫力UPの成分が含まれた食材やペットフード(総合栄養食)
- 食事量を減らすのではなく、栄養バランスがとれた質の良い食事
高齢ペットにとって食事の時間が「美味しく楽しい」時間となるよう、体調や身体の変化に合わせて食事内容や調理方法を見直してみましょう。
食事を切り替えていく時は、一度に変えてしまうと胃腸に負担がかかります。
少しずつ、様子を見ながら切り替えていきましょう。
■こんな変化はありませんか?
- 食事量 ⇒ 増えている / 減っている / 食べない
- 食欲 ⇒ 増えている / 減っている / ムラがある
- 固さ ⇒ 噛みにくい / 飲み込みにくい / 食べない
- 食べる姿勢 ⇒ 食器の位置が高すぎる / 食器の位置が低すぎる
老化による内臓や消化機能の低下をはじめ、足腰や首周りの筋肉や関節の衰え・痛みから今までと同じ食器の位置や器の形状だと食べにくくなることもあります。
また、身体をかがめる姿勢も高齢ペットには負担がかかります。
食事台等を利用して食べやすい高さや角度にごはんやお水を置く等、食事環境の見直しも大切です。
その他にも歯周病等のトラブルや口回りの筋肉を動かしにくくなることで、食欲があっても食べられない場合も少なくありません。口を開ける事や食べ物の咀嚼がスムーズに行えるよう、歯磨きケアや口回りのマッサージを日常生活に取り入れてみましょう。
食べやすい高さや角度にごはんを置いてあげると高齢ペットの首への負担軽減や誤嚥防止になります。
■ 高齢ペットが食べやすい食事の工夫例
- 食事の量や回数を調整する
- 食べやすく消化しやすい形状・固さにする
(こまかくする・ふやかす・やわらかくする・ウェットフードにする等)
ふやかす前のフード
ふやかした状態のフード(ふやかす時間はフードによって異なります。)
ふやかした後、つぶしたフード
- 食欲に合わせ、嗜好性が上がる工夫(温める・トッピング等)をする
- 不足しがちな水分はペット用ミルクやスープ等を上手に取り入れてみる
■高齢ペットの食事レシピ例
・野菜と肉または魚のトッピングごはん
旬の野菜や低脂肪の肉をオメガ3・6が含まれた良質ごく少量の油と炒めたり、お湯で湯がいた食材をドライフードへトッピング。
香りや風味が上がり、嗜好性も上がります。
トッピングの際はいつものフード量を加減し、全体の食事量に気を付けましょう。
・オートミール(えん麦)のリゾット
消化・吸収のよいリゾット(雑炊)は食材が柔らかくなって食べやすくなり、水分も含まれ高齢ペットにはおすすめの食事です。
栄養素が多いオートミール(えん麦)や新鮮な野菜、低脂肪の肉または魚と一緒に煮込む事で、栄養素もギュッと濃縮されます。
・豆乳シチュー
野菜・肉を食べやすい大きさに揃え、食べた時の食感が出るよう工夫します。
食物繊維が豊富なキノコ類やブロッコリー、植物性タンパク質が含まれる豆乳を少量取り入れ、シチュー仕立てに。
スープの素材を変えると嗜好性やバリエーションが豊かになり、食事への意欲アップにも繋がります。
・特別な日のメニュー
ペットの状態に合わせた栄養バランス、食材の大きさ、調理方法で、特別な日のご飯をいつもよりグレードアップ。
かぼちゃやさつまいも等、素材の甘みを活かしたケーキや低脂肪・高たんぱく質の肉で筋力の維持、デトックス効果のある茹でたハトムギにキュウリのすりおろしをトッピングし、滞りがちな老廃物の排出促進効果を。
食べる際はペットの食べやすい大きさにカットし、食事量を考慮して数回に分けるなど工夫しましょう。
美味しく・栄養バランスに配慮しながら、特別な日の食事を楽しみましょう。
*疾病等で食事管理をされている際は、事前にかかりつけ医の先生へご相談下さい。
■高齢期ペットにとって大切な「食事」とは・・・
- 年齢・体調にあった食事
- 栄養バランスと良質な食事内容
- 適切な食事量・変化に合わせた食事回数
- 落ち着いて食べる事ができる食事環境
高齢ペットとの暮らしは、飼い主さんのサポートが必要不可欠です。
日頃の健康管理を始め、適度な運動とバランスの良い食事や年齢・体調に合った栄養の摂取、食事環境の工夫で、心身健やかで楽しいひとときを1日も長く過ごしていきましょう。
東京都動物愛護推進員
Inumanic 代表 飛彈 樹里