猫を複数飼いする前に考えること
〜猫同士の相性編
飼い主さんが愛猫のためによかれと思って2匹目を迎えたのに、かえって猫に大きなストレスがかかってしまった……というケースもあります。そこで、複数飼いをする前に知っておきたい、猫同士の「相性」について解説します。
複数飼いを考えるなら、「相性」は大事
猫同士の相性の良し悪しは、結局のところ対面しないことにはわかりませんが、一般論として、うまくいきやすい/行きにくい組み合わせの傾向はあるので、以下、参考にしてみてください。
猫同士の相性の例
- 先住猫の「性格」が社交的だと受け入れやすい
先住猫が社交的な性格なら対面時からスムーズにいくこともありますが、1匹でいることを好んだり、人にべったりで“猫が嫌いな猫”だったりすると、不仲になる恐れがあります。
- 先住猫と新しい猫の「年齢」差は小さいほうがいい
高齢猫は環境の変化に対応しにくく、また体力的な差もあり、若い猫を迎えることでストレスになる可能性があります。社交的な性格であれば高齢猫でも積極的に子猫のお世話をするなど活発になることは実際ありますが、「やんちゃな子猫がいれば若々しく元気になるだろう」という意図で迎え入れるのは、おすすめできません。一方で、子猫期は柔軟性がある時期なので、子猫×子猫の組み合わせは、比較的仲よくなりやすいでしょう。
- 「血縁」関係にある猫同士は、仲よくなりやすい
母猫×子猫、きょうだい猫同士が離れずに過ごしていた場合は、迎えてからもそのまま仲よくなれることが多いでしょう。あるいは離乳まで血縁関係のある猫といっしょに暮らしていた猫は社会化ができているので、比較的ほかの猫を受け入れやすい傾向があります。
- 「性別」は、オス×オスが最も難しい
性別による組み合わせは、個体差が大きく、また不妊・去勢手術の影響によっても変わるので一概には言えませんが、参考までに、異性同士のオス×メスや、子育てを助け合うこともあるメス×メスは比較的うまくいきやすいでしょう。一方で、オス同士は、なわばり意識からケンカに発展しやすいので注意が必要です。去勢手術をしても、同居猫との争いや、自分にニオイをアピールするための尿スプレー(壁などの垂直面にオシッコを少量飛ばす)が残ったりすることがあります。
迎え方も、相性に大きく影響します
猫同士の相性は、上記のように猫の性質が関わってきますが、新入り猫の受け入れ方・対面のさせ方によっても、先住猫が受ける印象は変わります。いきなり対面させず、「新入り猫をケージに入れて隔離部屋へ→部屋を分けずにケージ越しに対面→ケージなしで対面」と、少しずつ先住猫との距離を近づけましょう。
とくに外で生活していた猫を迎える場合は、寄生虫や病原体の感染予防のために、1ヶ月間は先住猫と居住空間を分ける必要があります。新たに迎える猫には動物病院でウイルス検査や駆虫薬の投与をしてもらい、先住猫にもあらかじめワクチン接種を受けさせておくことが大切です。
対面後も先住猫が疎外感をもたないように、ごはんやスキンシップ、お手入れの順番は先住猫を優先しましょう。
先住猫と新しく迎えた猫の相性がうまくいかない場合、“折り合いが悪い”程度であれば、生活空間を分けたり、弱い猫が追い詰められにくい逃げ道を確保することで、衝突を避けながら同居を続けることもできます。しかし、不仲の程度によっては体調不良をきたしたり、ケンカが絶えなくなったりしてしまうこともあります。正式に迎える前の期間として「トライアル」を実施している保護団体等もあり(基準や詳細は各団体による)、猫にとって極度のストレスがかからないか相性を確かめることができますので、相談してみるといいでしょう。
文・本木文恵(猫の本専門出版「ねこねっこ」代表)
協力/東京猫医療センター 服部幸院長、写真/たむらりえ