愛犬の選び方
〜家庭犬しつけインストラクターからのアドバイス〜
これから犬を迎えようという方には、是非ご自身に合った犬選びをして頂きたいと思います。「一目惚れしてこの子に決めたものの、いざ家に迎えてみると、元気すぎて大変だった」、「昔から憧れていた犬種だったので迷いなく迎えたのに、思いの外、吠え声が大きくて困っている」そんな話を聞くたびに、犬選びの大切さを痛感するからです。犬を迎えて幸せな気持ちがずっと長続きするように、自分に合う犬の選び方について考えてみましょう。
すでに心に決めた犬種があるという方もいるかもしれませんし、漠然と犬がいる生活に憧れているという方もいるかもしれません。犬種図鑑を眺めてみたり、インターネットで検索したり、ペットショップに足を運んでみたり、ブリーダーに話を聞きにいったり、すでにリサーチを始めている方は、素晴らしい!犬を迎える際には、たくさんの選択肢があります。純血犬種にするのかミックス犬(雑種)にするのか。迎えるのはブリーダーからなのか、ペットショップからなのか、保護施設からなのか。迎えるのはオス犬かメス犬か、子犬か成犬か。たくさんの選択肢から自分にぴったりな犬を選ぶためのポイントは、犬について知ること、自分について知ること、そして、バランスのとれたマッチングをすることと言えます。まず、犬を知ることから始めてみましょう。近所を散歩している犬や友達の家の犬を観察するのも良いアイディアです。恋は盲目とばかりに飛びついて、思わぬ落とし穴があっては大変ですから!
さあ、ここで具体的な犬種名をみて犬選びの一助にしてみましょう。アニコム損害保険株式会社(以下アニコム)が毎年発表している人気犬種ランキングの最新の1位から20位は次の通りです。1位トイ・プードル、2位チワワ、3位ミックス犬(雑種)、4位柴犬、5位ミニチュア・ダックスフント、6位ポメラニアン、7位ミニチュア・シュナウザー、8位ヨークシャー・テリア、9位フレンチ・ブルドッグ、10位シー・ズー、11位マルチーズ、12位カニンヘン・ダックスフント、13位パグ、14位ゴールデン・レトリバー、15位ラブラドール・レトリバー、16位キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル、17位パピヨン、18位イタリアン・グレーハウンド、19位ウェルシュ・コーギー・ペンブローク、20位ジャック・ラッセル・テリア。保険の新規登録のあった犬種を人気犬種としてランキングしたものですが、人気がある=飼いやすい=自分にも合うということとは限りませんので、気になる犬種があれば、サイズ、被毛のタイプ、牧羊犬や猟犬といったもともとの役割など、どのような犬種なのか調べてみるのがお勧めです。犬種図鑑を紐解くと、純血犬種だけでも200種類以上あるのですから、驚きです。では、ミックス犬は?もし、両親犬の犬種が分かっていれば、それぞれの犬種から予測できます。私が子供の頃に家にいた犬はジャーマン・シェパードとコリーのミックス犬でしたが、外見も性格も両親犬の特徴がよく出ていました。オス犬とメス犬の違いはどうでしょう。一般的にはオス犬の方が体が大きく、メス犬の方が小柄です。性格は個体差もありますが、オス犬はテリトリーの意識が高く、人に対しては甘えっ子が多く、遊び好きで活動的。メス犬は独立心が強くあまり人にベタベタ甘えないことが多く、のんびりしている、という傾向があります。
犬について具体的に調べていくと同時に、犬を迎えたらどのような生活になるのか、自分は犬と一緒に何をしてみたいか、と想像してみてください。それによって、活発な犬が合うのか、落ち着いた犬が合うのか、小型犬の方が良いのか、大型犬でも良いのか、イメージしやすくなります。犬と散歩に行く時間はどれくらい取れますか?自分以外に一緒に犬の世話をしてくれる家族はいますか?家族に子供はいますか?他にペットはいますか?家族の中に犬の毛のアレルギーの人はいませんか?仕事や学校が休みの日には、いつもの散歩以外にどんな場所に犬と一緒に出かけますか?病気の治療や予防注射のために年に何回かは動物病院へ行くことも必要です。大型犬の方が小型犬よりも費用もかかります。年末年始に帰省するのであれば犬も車や電車で一緒に連れて行きますか?今まで犬と暮らしたことのない方にとっては未知の世界ですが、1日の生活、1年の生活の中に犬がいることを意識してみると良いと思います。
犬について調べ、ご自身のライフスタイルを確認できたら、今度は自分の生活と良い相性の犬を探していきます。先のアニコムの人気犬種を例にとると、チワワ、ミニチュアとカニンヘン・ダックスフント、ポメラニアン、ミニチュア・ピンシャー、ヨークシャー・テリア、マルチーズ、パピヨンといった小型犬が都会のマンション暮らしの方のニーズに合いそうです。戸建てに住んでいてアウトドア派で休みごとに車で郊外に出かけたりドッグスポーツやキャンプを楽しみたい方は、ジャック・ラッセル・テリア、ウェルシュ・コーギー、イタリアン・グレーハウンド、ラブラドール・レトリバーやゴールデン・レトリバーといった犬を検討してみると良さそうです。犬の毛にアレルギーのある家族がいる場合はトイ・プードルのように定期的にトリミングをすれば抜け毛が少ない犬種が第一候補に上がりますが、アレルギーがある場合は、犬を迎える前に必ず医師に相談をしてください。子供と一緒に時間を過ごすのであれば、パグ、フレンチ・ブルドッグ、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル、ラブラドール・レトリバーなどの人が好きで大らかな性格の犬種が合いそうです。とにかく長い距離を散歩するのに付き合って欲しいという方の相棒には、柴犬が良さそうです。色々なヘアスタイルを楽しみたいというお洒落な方には、トリミングのバリエーションが多いトイ・プードルやミニチュア・シュナウザーが魅力的でしょう。
自分のライフスタイルに合わせた犬探しが間違いない犬選びの方法である一方で、自分のライフスタイルを柔軟に変えることができる方は、少し背伸びして犬に合わせたライフスタイルにすることで、今までチャレンジをすることのなかった世界に飛び込むことができるかもしれません。私のパートナー犬のヒューゴは、ベルジアン・タービュレンという犬種ですが、この犬種を迎えた人の多くがアジリティというドッグスポーツで活躍していると知り、私もヒューゴが若い頃にアジリティにチャレンジしました。もともと運動が得意ではない私ですが、犬と一緒に走るという楽しさはひとりでは味わうことのできないワクワクする体験でした。
自分のライフスタイルに合う犬を選ぶ、選んだ犬の可能性に合わせたライフスタイルにチャレンジしてみる、いずれにしてもイメージ通りの犬との生活を手に入れるためには、一緒に暮らし始めて間もない頃からの社会化やしつけが必須であることはいうまでもありません。
犬を迎えるというのは、長年連れ添う家族を迎えるということです。アニコムや一般財団法人ペットフード協会の統計によると、近年の犬の平均寿命は14歳を超えています。平均の寿命ですからこれより長生きの犬もいて、私の実家のトイ・プードルは大きな病気もせずに17歳まで生きました。10年以上一緒に暮らすと考えると、その間には家族構成、生活環境、ライフスタイルの変化がありそうです。引越しのために手放すというような人間の勝手な理由で放棄される犬をこれ以上増やしたくはありません。流行っているからつい欲しくなってという理由で犬を迎えるのではなく、様々な生活の変化があっても、最後まで大切な家族として一緒に暮らすという気持ちを持った上で、犬との暮らしを始める方が増えることを願っています。
東京都動物愛護推進員
Can ! Do ! Pet Dog Schoolインストラクター
川原志津香