猫を複数飼いする前に考えること
〜飼う数と不妊・去勢手術編
犬の飼い主さんに比べて猫の飼い主さんは、複数匹をいっしょに飼う「複数飼い」を選択する方が多い傾向にあります。そこで本稿では、すでに先住猫がいてさらに猫を迎えたい場合や、複数匹を同時に飼い始めたい場合に、あらかじめ考えておきたいことをお話しします。
お世話できない数を、飼ってはいけない
仲のよい猫同士をそろって迎えたり、あるいは先住猫と新しく迎えた猫との相性がうまくいけば、猫同士で遊んでコミュニケーションをとり、エネルギーも発散できるので、飼い主さんが留守中も安心できますね。複数飼いにはそのようないい面もありますが、飼育数が増えると、お世話がし切れなくなるリスクもあります。
1家庭あたりの理想的な猫の数は、お金や室内環境などさまざまな面が関わってくるので一概にはいえませんが、「猫の健康と福祉を守って最期までお世話できる数」である必要があります。以下の項目を参考に、あなたの家庭での猫の上限数を考えてみてください。
飼う数を決めるにあたって考えたいこと
- 食事、トイレや猫砂やその他の道具代、医療費などの費用を考えて、すべての猫を将来飼い続けられるか(参考例として、1ヶ月で猫にかかるお金の平均額は、1匹飼いで7,485円、2匹以上で10,665円/ペットフード協会「令和元年 全国犬猫飼育実態調査」より)
- 猫が1匹で休息したいときに過ごせる居場所を確保できるか(理想は1匹あたり1室→例:3LDKなら5匹まで)
- 猫用のトイレを、最低でも仲よし猫同士のグループ数ぶん置くことができるか(理想の数は、匹数+1個以上)
- 自分が病気や入院でお世話できなくなったときに、家族や後継人に任せられる数か
- 災害が起きたときに、猫たち全匹とともに避難できるか など
数を増やさないために、不妊・去勢手術を
最近では、猫が繁殖によって増えすぎて飼い主さんがお世話をし切れなくなる「多頭飼育崩壊」が全国で発生し続けています。ニュースで取り上げられることも増え、社会的にも注目を集めている課題といえます。望まない繁殖を防ぐには、不妊・去勢手術を受けさせましょう。
2019年に改正された動物愛護管理法でも、適正な飼養が困難となるおそれがあると認められる場合、その繁殖を防止するための不妊・去勢手術等を「講じなければならない」こととなりました。つまり、飼い主さんが「飼えない数まで増やさない」ように対応することは義務となっています。
「大好きな愛猫の子猫をさらに迎えたい」「手術はかわいそう」「産ませるのが自然」という意見もありますが、猫は1回の出産で複数匹(多いと8匹ほど)を産むので、あっという間に数が増えてしまう可能性があります。数が増え過ぎてお世話ができなくなったり、発情しているのに相手の異性がいないストレスがあれば、猫にとってもっとかわいそうな状況を招いてしまいます。繁殖をコントロールして、快適な生活環境を守ってあげられるのは飼い主さんだけです。以下のようなメリットも参考にしてください。
不妊・去勢手術のメリット
- 同居猫同士で、あるいは脱走時に屋外の猫と交尾をしてしまうのを避けられる
- 生殖器や性ホルモンに関わる病気、ケンカや交尾による感染症を予防できる
- 発情や競争による行動が落ち着き、猫のストレスを軽減できる など
文・本木文恵(猫の本専門出版「ねこねっこ」代表)
協力/東京猫医療センター 服部幸院長、写真/たむらりえ