「犬のトイレトレーニング最新事情」(その1:散歩中の犬の排泄について)
はじめに
住宅街や公園を散歩していると、犬が排泄をした後にペットボトルの水をかけて薄める光景をよく見かけるようになりました。最近は携帯シャワーボトルやペットボトルに取り付けるだけでシャワー状に水が出るキャップのような便利グッズも販売されているので、散歩中に犬がおしっこをした場合は飼い主は放置せず水で流して処理するのがマナーという理解が広がりつつあるようです。

今回のコラムの前半(その1)では、散歩中の犬の排泄物のマナーについて改めて考え、コラムの後半(その2)では、犬の室内トイレのトレーニング方法についてご紹介したいと思います。人に迷惑をかけないように、住んでいる地域を清潔に保つために、という理由以上に、犬に室内トイレを教えるメリットがたくさんあることもご理解頂けるでしょう。
犬の排泄は、外派?中派?
子犬を家に迎えると、家の中を清潔に保つために、庭先や室内の決まった場所で排泄をさせるしつけを行うものですが、犬にはもともと自分の住処を汚したくないという習性があります。生後4ヶ月を過ぎて外に散歩に行くようになると、家では排泄をしないで、散歩に出かけたときにする外派の犬が増えていきます。家で粗相をしなくなるのは助かるのですが、外でしか排泄をしなくなると、マナーを考慮して家でトイレをさせてから散歩に行こうとしても思うようにしてくれない、また悪天候でも外に連れて行かなければならない、こうなってしまうと大変です。
東京都に寄せられる犬に関する苦情には、排泄物の不始末が上位に含まれています。散歩中の排泄の問題ばかりではないとしても、現代の犬のトイレ事情について再度確認する必要がありそうです。
そもそも、1990年代に日本にペットブームが到来して犬の数が爆発的に増える前は、都内でも歩道で犬の糞の落とし物を見かけることは珍しくありませんでした。実際、排泄をさせるために犬を散歩しているという人も多かったのです。緑地の多い地域では、スコップを片手に散歩に出かけて、犬の糞は手近な場所に埋めて帰って来る人もいたぐらいです。その後、犬の飼育頭数が増えるにつれて、糞を放置すると歩行者が踏んでしまって迷惑になる、また匂いが気になるということで、ビニールに入れて持ち帰って処分する人が増えていきました。つまり、犬の排泄についての「マナー」や「常識」は、この30年ほどで大きく転換したということなのです。
東京都が発行している「犬と散歩をするときの3つのルール」に犬のトイレに関する記載があり、「トイレは散歩前に家で済ませましょう もし、路上や電柱などにおしっこをしてしまった場合は、直ぐに水で流すほか、ペットシーツを持参したり、マナーベルト(オムツ)をつけたりすることも、飼い主としてのマナーです。」と書かれています。つまり、犬のトイレは散歩中に済ませるものではなく、家で済ませてから散歩に出ることが推奨されているのです。排泄のために出かけていた散歩は、犬の気分転換や脳への刺激、また一緒に出かけることによって飼い主と犬との絆を作る大事な時間という位置付けに移行していっているのです。
犬のトイレはできるだけ家で済ませてから。でも、そんなにうまく行く?!

もちろん、犬はロボットではありませんから、常に散歩に出かける直前にトイレを済ませてくれるとは限りません。仮にできたとしても、長い散歩の途中で再び排泄をしてしまうこともあるでしょう。散歩して少し腸が動かないと便意を催さないというのも理解できます。それでも、家でトイレを済ませてから散歩に出かけることを心がけて、習慣をつけていけば、散歩中にする排泄の回数は減り、1回あたりの量も減るはずです。自宅でのトイレトレーニングの方法については後述したいと思います。

(掛け声で排泄ができる場合はトイレシーツを持参すると片付けが楽)
犬によっては、もともと1日のおしっこの回数が多い子もいます。他の犬の排泄物の匂いに誘われて、あちこちに自分の匂いをつけるマーキング行動が見られることもあります。特に未去勢の雄犬は、電柱や木があると片足を上げておしっこをすることが多く、犬に任せて自由に匂いかぎをさせすぎるのはお勧めしません。散歩は犬の気分転換や脳への刺激という大切な役割もあるので、全ての匂いかぎを禁止したくはありませんが、全てに付き合わないようにするバランスが大事です。
飼い主が迷惑になりにくいと判断した場所で匂いかぎをさせ、必要であれば排泄を促し、それ以外の場所は少し立ち止まったり匂いをかいだりすることがあっても、「行くよ」などと声をかけて速やかに立ち去るという対処をすると良いでしょう。トイレを促す掛け声に応じてトイレシーツの上で排泄ができる犬であれば、トイレシーツを散歩に持参するのも良いです。あまりにマーキング行動がひどい未去勢の雄犬の場合は、獣医師と去勢手術について相談してみるのも一案です。
犬のトイレはできるだけ家で済ませてから。でも、我慢できなかったら?
犬のトイレはできるだけ家で済ませるのが推奨されることがわかりました。それでも、排泄は生理現象。我慢できず散歩中に犬が排泄をすることもあるでしょう。そんな場合の対応について考えてみます。
犬が散歩中にアスファルトの上で排泄をしたとしましょう。ビニール袋で取り除ける糞はもちろん拾って持ち帰りますが、おしっこはどうすれば良いでしょうか。冒頭にご紹介した通り、水をかけて薄める対処をすれば万全でしょうか。

元はと言えば、散歩中に土や芝生の上でしたおしっこを放置すると、匂いが残ったり芝生が枯れたりすることが問題となり、水をかけて薄めるというアイデアが出てきたのです。匂いが定着すれば、その匂いに誘われてまた別の犬が同じ場所で排泄をしていく連鎖が起きるので、匂いを薄めるために水をかけるという考えはあながち間違いではなさそうです。問題は、都会で犬を散歩する地域には土や芝生が少なくて、アスファルトの上を散歩する犬が多いことです。アスファルトに水は染み込まないので、「おしっこをしたら水」と鵜呑みにして、マナーを守ったつもりで水をかけたとしても、実際には水で薄めたと同時に範囲を広げているだけという事態になりかねません(特に大型犬のおしっこは半端な水の量では薄まることがないので、薄まるだけかけると大きな水たまりを広げるだけ)。土や芝生の上でおしっこをした場合は、水をかけて薄める作戦は有効です。ただ、土や芝生が少ない都心や住宅街では、少し工夫が必要です。よその家の前で排泄をした場合に水をかけて大きな水たまりを作って立ち去るよりも、トイレシーツを活用して、ある程度吸い取ってから水で洗い流すというのが良いのではないでしょうか。
ビニール袋で取り除いた糞は、それ専用のごみ箱があるとき以外は持ち帰り、地域のルールに従って処理するようにしましょう。水洗トイレに流してしまうと故障や詰まりの原因となるおそれもあります。多くの場合は、燃えるごみとして処理することになっているようですが、ごみ収集の日まで、近隣に匂いが迷惑にならないように密閉できるごみ箱や脱臭効果のあるビニール袋で保管するのも良いアイデアです。
犬に室内トイレを教えるのにはメリットがある
「トイレを済ませてから犬の散歩に出かけましょう。」そう言われても、実際に犬用のトイレに連れて行っても散歩に行く気配を感じて一向に排泄をしない。まだ室内トイレのしつけができていない。トイレのしつけに失敗して家の中でもあちこち粗相されてしまっている。そんな方は、是非コラム後半(その2)の犬のトレーニングについてのアドバイスをご一読ください。
人に迷惑をかけないように、住んでいる地域を清潔に保つために、という理由以上に、犬に室内トイレを教えるメリットがたくさんあることもご理解頂けるはずです。
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