保護犬の迎え方
〜家庭犬しつけインストラクターからのアドバイス〜
昨今、犬を家族に迎える際に、保護犬を迎えるという選択をする方が増えているのは嬉しいことです。動物愛護相談センターのような施設や保護団体に保護されている飼主のいない犬を「保護犬」と呼びます。保護犬には幼齢の犬も高齢の犬もいますし、サイズも小型犬から大型犬まで様々です。保護犬を迎え、素敵な家族になっていくために大切なことについてお話します。
犬との生活を始めたいと思ったとき、みなさんは、どのような生活を夢に描いているでしょうか?一緒にお散歩?ドッグカフェ巡り?一緒に旅行?自宅でのんびりリラックスした時間を一緒に過ごす?保護犬のみならず、犬を迎えるにあたっては、自分のライフスタイルに合う犬を迎えるということが「うまくいくコツ」とも言えるでしょう。
日本ではまだまだ犬を迎えるなら子犬を、という方が多いと思いますが、欧米では、保護施設から成犬を迎える家族も多いものです。まだ幼い子犬を迎えれば愛くるしい仕草に日々癒される一方で、排泄の間隔の短い子犬のトイレのしつけには最初手間がかかります。乳歯から永久歯に抜け替わる時期に鋭い乳歯で甘噛みをしてくるので、噛んで良いものをしっかり噛ませて遊び、噛んではいけないものは片付けてしまうなどの工夫も必要です。保護犬の中には、手のかかる子犬時代を過ぎて成犬になっている犬もたくさんいます。また、成長して体のサイズも落ち着いている場合、大きさに制限のある共同住宅にお住まいの場合は住宅事情にあったサイズの犬を選ぶこともできます。日々忙しい生活をしている家庭には、子犬よりむしろ落ち着いた成犬を迎える選択肢が適している場合もあるのです。
成犬の保護犬は、今までどのような体験をしてきたかによって、人が苦手、犬が苦手、お散歩が苦手、のように、苦手なものがある場合があります。家族に迎える際にすでに好きなもの、苦手なもの、が分かっている場合もあるでしょうし、生活していく中で気がつくこともあるでしょう。苦手なものは、少しずつ慣らしていくことで不安をなくしていき、吠えてしまったりしないように少しずつ練習をして改善していきます。大きな声で叱りつけたり、諦めたりせず、科学的な理論に基づいて褒めてしつける手法を用いる家庭犬のしつけ方教室にアドバイスを求めてみてください。
我が家には元保護犬のオスカーがいます。オスカーに出会う前に私が探していた新しく家族に迎えたい犬の条件は、
(1)10キロ前後の大きさであること、
(2)子犬でもシニア犬でもない2歳から5歳ぐらいの犬であること、
(3)家族、特に先住犬ヒューゴと相性が良いこと、でした。インターネットなどで新しい飼主を募集している犬の情報を探すこと数ヶ月後。候補に上がったのがオスカーでした。3歳のときに前の飼主に飼育放棄され、数ヶ月の保護生活を経て4歳になっていました。少し神経質なところがあり、人に慣れるのに時間がかかり、散歩中他の犬に出会うと吠える、などの説明を受けた、体重12キロの犬でした。
一緒に生活を始めてみると、急に体を触られると嫌がる、散歩中に自転車やスクーターが近くを通ると吠える、掃除機が苦手、チャイムに吠える、といった色々な「苦手」が見えてきました。一つ一つ、見つけるたびに、ご褒美を惜しまずトレーニングを続けた結果、周りの友人たちも目を見張るほど改善しました。ギョロギョロとしていた目つきも、とても柔らかく優しいものになりました。
苦手なものがたくさんあったオスカーですが、初めから良いところもたくさんありました。室内トイレを以前の飼主のところで教えてもらっていたようで、トイレのしつけは本当に手がかかりませんでした。また、クレートと呼ばれるプラスチック製の犬用のハウスで大人しく待っていることができました。車酔いもしませんでした。散歩で外に出かけると、元気よく楽しそうに一緒に歩きました。雷が苦手な犬が多い中で、オスカーは雷や雨の音も平気でした。ふわふわで可愛らしい様子も、家族に好評でした。
我が家は11歳のシニア犬のヒューゴと、小学生の娘がいるので、新しく子犬を家族に迎えるとしたら、随分手がかかって大変だったでしょう。でも、成犬を迎える選択をしたおかげで、私たちのライフスタイルにもとてもよく合い、スムーズなスタートを切ることができました。何より、他の犬が苦手なオスカーが先住犬ヒューゴとは相性が良く、初日から一緒に問題なく過ごすことができ、ヒューゴも楽しそうに過ごしているのを見ると譲渡を受けて良かったと日々思うのです。
これからの成長が未知数な子犬に対し、すでに性格も体格もできあがっている成犬を迎えるには、オスカーのように苦手を克服する期間が必要な場合もありますが、寄り添って一緒に歩む過程で家族としての絆も深まるものと思います。とても大人しい穏やかな性格の保護犬もたくさんいます。犬を迎えて、どのような生活がしたいかなというイメージをしながら、自分のライフスタイルに合いそうな候補犬を見つけたら、保護している施設や団体に連絡を取ってみましょう。もし自分で探すのが難しい場合は、保護施設や団体に迎えたい犬の条件をいくつか挙げて一緒に探してもらうと良いでしょう。良きご縁が繋がり、幸せな家族が増えていくことを切に願います。
東京都動物愛護推進員
Can ! Do ! Pet Dog Schoolインストラクター
川原志津香